私たちは、無意識に左右されている 1 ー 西口一希
ビジネスに限らず、生きていく上で、理解すべき重要な事実のように思います。
心理学や大脳生理学などを勉強される方にとっては、当たり前のようですが、意外に、ビジネスの場面では、この前提を無視している場合が多いように思います。
これまで、消費財のビジネスに関わってきて、様々な方々のビジネス本を読み、実務者の成功例や失敗例を勉強させていただきました。しかしながら、実務者として感じてきたのは、セオリーと現実の大きなギャップです。
今から思えば、あんなにたくさんのセオリー本など読まなければ良かったのかもしれません。そういったギャップには、マーケッターとしての技術不足・経験不足など、様々な要因があるとは思いますが、最大の違いは、意識下にある”人”を信じてしまうこと = 人間は意識に基づいて行動していると信じてしまっていることのように思います。
人がとる行動の内、明確に自分の意識で意思決定を行った上で、行動出来ているのはほとんど無いというのが現実のようです。行動の90%以上は”無意識”に行っており、その行動を”行動を取った直後”に、意識として”後解釈”しているだけであって、”意識的(意図をもって)に行動した”と勘違いしているのです。
この事実は心理学・脳神経科学、大脳生理学の分野の実験などを紐解くと、多くの根拠が存在します。つまり、行動さらに感情の動き = 呼吸の増減、心臓の動き、内臓の働きはもとより、日常の行動、目の動き、発汗、体温変化、姿勢、物の使用・不使用、物・サービスの購買・非購買人、そして、情動ともいえる、”なんとなく”な気分、好き嫌い、機嫌は、無意識化の作用の結果なのです。
また、いわゆるトラウマ、または、ブランドへの信奉(世に言うブランドロイヤルティ)は、当たり前ですが、ほとんど”意識”されること無く、”無意識”に蓄積されています。
この無意識を、別の言い方をするならば、”人間の心”だととらえてもいいように思います。ビジネスでよく言う、”理屈ではなく直感”、”左脳でなく右脳”は、この”無意識の働き”をさしていると考えて問題なさそうです。
西口一希