いろいろ備忘録 ー 西口一希

停止中だったブログですが、引っ越して再開することにしました。

知っているものしか認識できない ー 西口一希

そもそも、脳内に存在している”情報”と”連想”はどのように形成されたのか? ”記憶”の仕組みとともに様々な研究が進んでいます。これまでの研究では、これらの”情報”と”連想”形成は大きくは2種類のようです。

1)先天的 - 生まれつき、本能として持っている情報と連想と肉体へのフィードバックシステム
2)後天的 - 生後、生きてゆく中で得たもの。例えば、意識はせずとも経験(五感)を通じて、または、意識的に得た情報(本を読む。学校で学ぶ。親から教えられる。)。

 

例えば、一才の赤ちゃんでも熱いお湯が手にかかれば手を引っ込め、泣きます。熱いといった肉体刺激が起こすフィードバックです。ところが、赤ちゃんは、BBQの火などには警戒なしで近づいてしまいます。近づいて熱さを皮膚から感知するとそれ以上近寄らないか、泣きますが。

ところが、ある一定期間を経て、大人になれば、BBQの火には視覚にはいれば、簡単には近づきませんし、火が見える時点でそもそも警戒します。一歳の赤ちゃんの熱さという皮膚刺激としての”情報”と”連想”は先天的なもので脳内に存在しており、また大人の視覚”情報”と”連想”またその反応は後天的で、生きている中での経験または知識として得たものです。

大人になるまでに、実際に火にさわって熱い思いをし、不快で苦しかった、または親に強く叱られた、このような経験が連想として脳に存在し、”近づかない”、”筋肉を緊張させ警戒する”との行動につながっているのです。もしくは、幸い、そのような経験が一度もなくとも、親から教えられたり、また、本から学ぶ(知識)として強く伝えられたものが、脳に残っている場合もあります。

しかしながら、多くの事例研究が示しているのは、経験なしに学んだ情報・連想よりも、経験として得た情報・連想のほうがはるかに大きな影響を、肉体的変化、行動変化、感情変化にあたえるようです。この経験が強烈な”不快”(痛みや悲しみを起こす肉体的変化)を伴った場合、いわゆるBBQの火へのトラウマになりますし、このような経験が、非常に楽しい”快”経験を伴えば(例えば、家族友人と非常に楽しく過ごした)、BBQの火は、一種のブランド化されたアイコンとなりえます。

このように、BBQの火がポジティブな連想としてブランド化されている場合、この人に、BBQの火を伴ってビールの新商品の広告をすると、この”快”連想にともなって、このビールへの愛着度が圧倒的に強くなります。よって、このビールの本当のおいしさはるかに超えた選好をCMだけで得る事ができます。人間誰しもがそれぞれの独自の情報と連想を無意識に持っているために、そもそも普遍的なビールの”おいしさ”評価は不可能ですが。一方で、トラウマとまでは無くてもBBQの火に、嫌な連想を無意識に持っていれば、このビールへの非選好が起こります。

そういった意味では、”私たちは既に知っているもの(情報と連想が脳内に存在している)ものしか認識出来ない”とも言えます。

 

西口一希